シンガポールの人気ダイニングエリアDempseyの一角に、緑に囲まれた感じの良い一軒家レストランがある。
宮崎駿の世界に出てくるような可愛らしいが、しかし芯の一本通った感じの外観。
一歩入った瞬間から心地良い空間が広がり、今夜のレストランストーリーに期待が膨らむ。
オープンカウンター中で、きびきびと料理をしている女性が若干35歳のオーナーシェフのペトリーナ。 プライベートバンカーからシェフに転身したという異色の経歴をもつ。
カウンターには様々なお手製の「発酵食品」が並ぶ。 日本では発酵食品ブームが起きて久しいが、まだシンガポールではこの食文化をメニューに加えるシェフは少ない。 しかしペトリーナは大胆にもメニューの8割方に発酵食品を加えているのだ。 「シンガポール料理界の発酵食品の女王」と呼ばれ、ワールドグルメサミット2017年度の「Awards Of Excellence」にも選ばれたシェフの料理とは?
ディナーは「DEVILLED EGG/デビルドエッグ」からスタート。 小さなお料理の中にもディジョンマスタードのアイオリソース、ディル、塩漬けバラマンディとじゃがいものブランダードの黄身ペーストが味わえる。 トップの青梗菜のピクルスが良いアクセントづけに。
「TUNA TARTARE/マグロのタルタル」は、煮干しの出汁とピンクペッパーとタピオカ粉のクラッカーの上に、チンチャロ(マラッカ特産の海老醤)アリオリソースと紫玉ねぎ、とびこであえた、マグロのタルタル。 トップにはチャイブが添えられる。
「TOAST/トースト」は、勿論ただのトーストではなく、マルチグレイン(雑穀)パンの上に、お手製のリコッタチーズと梅干を合わせたスプレッドを塗り、トッピングには発酵レタスにジュニパーベリー、山椒、黒胡椒、玉ねぎと炒められた発酵マッシュルームとヒメマツタケのソースがかけられ、トップにはピスタチオとウォータークレセントが飾られている。
上記3点は前菜メニューの中でも一番軽い「Snacks/スナック」で、いずれも本来はシンプルな料理なのに、シェフの食材に対する知識と料理の世界観が体現された新しい味のクリエイションが、兎に角楽しめる。
つづく、「Small Plates/小皿料理」の「SCALLOP/ホタテ」は昆布締めされた北海道産のホタテをコールラビと菊芋のピューレとともに頂くく。 ホタテの上にはレモンオイルが、ピューレの上には赤アマランサスとコリアンダーの葉が添えらえている。
「BURRATA/ブラタ」は良質なブラタチーズをピーマン、キュウリ、インディアンボリジのグリーンガスパチョと楽しむ。 マルチグレインのクロストニーと青梗菜、サヨーテのコンフィとともに頂く。
「PRAWNS/エビ」スリランカ産の車海老はオルゾパスタとフォアグラのフォームの上に盛られ、
蕪のソテーと海藻ピクルスと海藻のフライとともに頂く。 エンドウの巻きひげの飾りが添えられる。
「BOILED PORK BELLY/茹で豚バラ」
韓国のボッサムに影響を受けた一皿で、スペインのデュロック豚を使用。 トンチミキムチの上のに豚肉を並べ、キムチのたれでキノアを煮込み、ここに桜エビを加えたもの。
ここまでが前菜だが、様々な食材をここまで集約させるシェフの発想とアレンジ力には、料理好きなら興奮が止まらないはず。
メインが運ばれる前にレストランの外の自家菜園を案内してもらった。
「ハーブのほとんどは自分で育てたものを使用しているの。 業者に頼んでもいつも欲しいハーブが手に入るわけではないから。料理をしていないときは、ハーブの手入れや、菜園の草抜きをしているわ。」 と楽し気にシェフは教えてくれた。
【後半に続く:~シンガポール初、発酵食品レストラン~後編(メインとデザート、シェフペトリーナについて」は近日中に公開】
〈レストラン情報〉
Morsels
住所 25 Dempsey Road, #01-04, 249670
Tel: 6266-3822
WEB:http://www.morsels.com.sg/
営業時間:
ブランチ:日曜日 11:00-15:00
ランチ火曜日~土曜日 12:00-15:00
ディナー火曜日~土曜日 18:00-22:00(金、土曜日は22:30まで)