堰琢磨シェフへのインタビュー前編 ~日本食未開発地、アゼルバイジャンで奮闘~

カスピ海西に位置し、ロシア連邦、ジョージア、アルメニア、イランの4か国に囲まれ、国土は日本の4分の1ほどの国、アゼルバイジャンに馴染みのある人は、日本でもシンガポールでもまだまだ少ない。 ただ、近年天然資源を潤沢に保有する国として、その経済成長に注目が集まる国でもある。

そんなアゼルバイジャンの首都バクーで2018年から約1年間、現地で活躍されていた堰琢磨シェフにインタビューする機会を得た。

2018年、堰シェフは現地の高級レストラン「CHiNAR」レストランのエグゼクティブシェフに迎えられ、単身アゼルバイジャンに向かった。 きっかけは、同レストランの人事担当の友人からの紹介だ。 迷った末、見聞を広めるべく、渡航を決意した。

CHINARレストランは現地財閥PASHA Holdingが管理するレストランの一つで、地元では多くの政界や実業家をクライエントに持つ。

大統領選挙後の再選祝勝会に大統領、その関係者が来店したことも。

務大臣からの、料理に対する感謝状とプレート。 シェフの家宝に!

和食ブームは世界を席巻し続け、人口990万人ほどのアゼルバイジャンでも人気は出てきているが、まだ流通が整っていない為、本格的な和食の提供が難しい。

アゼルバイジャンが内陸国の為、日本から輸送のルートはベルギー経由が一般的で、どうしても食材が手に入るまでは時間がかかる。

この為、シェフは和食一色ではなく、レストランのコンセプトであるアジアン料理全般を担当し、メニュー改定を行った。また現場での調理に加え、コスト管理、スタッフトレーニング等、マネージメント業務等、レストランのコンセプトを高める為に奮闘した。

地元のメディアでもシェフの活躍ぶりが取り上げられた。

アゼルバイジャンでの和食の普及の可能性を、堰シェフに質問したみた。

ー2013年にユネスコ無形文化遺産に『和食』認定された場所がバクーで、またアゼルバイジャンは以前から親日派が多く、和食、日本酒に対する評価はかなり高いです。

ただ、残念ながら現状は食材が充分でなく、日本から直接輸送しても高コストである為、本格的な和食の提供にはまだまだ課題が山積みです。しかし、その点を問題点を改善できれば必ず現地の人に受け入れられて需要拡大に繋がっていくのではないかと確信しております。 日本文化には興味を持つ人が多く、弊社スタッフも日本へ研修期間に行きます。 最近当店(CHiNAR)にてしゃぶしゃぶを始めました。メディアの影響もあり少しずつですが認知され、お客様からの評判も高くポテンシャルを感じています。

今後はラーメン、うどんにも挑戦したいです。和食と言ったら海外では『寿司』ですが、現状鮮魚がなく充分なパフォーマンスが出来てません。 その点が残念です。

日本からアゼルバイジャンの経済成長を見込んで、進出を検討している企業も出てきているが、この点に関して、シェフに率直な意見を聞いてみた。

ーアゼルバイジャンの豊富な天然資源を見込んだ経済成長は、外からみると熱を帯びていると感じると思いますが、まだまだですね。 いろいろな意味で。 まだ進出には時期尚早ではないかと思います。 日本で言われているほどの発展には達していないです。

今後のシェフ自身の展望について伺ってみた。

―日本の各地方の美味しい食材、お酒を世界中の人々と共有し地方の活性化に貢献したいです。自分は日本人なのでやはり食では和食が世界一だと思いますので(笑)。また、『食』で世界を平和にし次世代に夢と希望のある未来を継承していきます。

2019年からは再度、活躍の場をシンガポールに移し、5月現在、新コンセプトの和食レストランの立ち上げの準備中。

インタビュー後半(6月以降予定)で今後の活躍を更に追っていく予定です。

堰琢磨シェフプロフィール

シェフ歴20年。 2002年のロサンゼルスのBeverly Hilton Hotelを皮切りに海外のレストランで活躍。フランス、パリではBound Parisでエクゼクティブシェフとして勤務。シンガポールには2010年に来星。Hide Yamamotoのマネージメントとメニュー開発責任者として勤務、IKYUで総料理長、Shangrila Rasa Sentosa Resort & Spaの料理長として勤務。 2018年アゼルバイジャン、バクーのファインダイニングCHiNARにメニュー開発と、和食普及の為に渡航。 2019年、再度、シンガポールに活躍の場を移し、現在新コンセプトの和食店の準備中。

インタビューを終えて

このインタビューはシェフがアゼルバイジャン滞在中にFacebookのメッセンジャーを通して、連絡を取り合い、お話頂いたことをまとめました。

現地のアゼルバイジャンチームとも楽しく仕事をしている感じがインタビューの間も伝わってきました。 こちらからの質問にも、あえて現地のスタッフに答えてもらったり、スタッフにも活躍の場を与えようとしている様子が伺えました。 グローバルに活躍できるシェフに共通する人柄の素晴らしさを感じました。

シェフの現地の様子がわかるビデオリンクが手に入ったので、以下に紹介させて頂きます。

(文:ケルニン青木康子)